自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。「醸し人九平次（かもしびとくへいじ）LaMaison　山田錦」。名古屋市の萬乗醸造さんが醸しているお酒です。 美酒を醸すための設備と体制を先行して完了させた萬乗醸造の蔵元、久野九平治さんの近年の関心はもっぱら酒米作りです。蔵人が春…… more から秋にかけて兵庫では山田錦、岡山では雄町を自社栽培し、それをどんどん拡大させています。 ご自身もいろいろなメディアに登場すると、そこで語っているのは醸造ではなく、稲作です。「日本酒は長年、醸すことばかりに集中して、原材料の米をないがしろにしてきた」との思いを強くしているためだそうです。兵庫県西脇市黒田庄での山田錦作りは順調に進み、近年、現地に醸造拠点も設けているほどです。なかなかにすごいことですが、日ごろから空太郎が気になっているのは、愛知（名古屋）の地酒との主張がないことです。 これだけ熱心に米作りをしているのであれば、是非、地元の愛知県でも酒米作りに挑戦して欲しいものです。輸出という観点からすれば兵庫県産の山田錦を名古屋で醸しても違和感はないかもしれませんが、国内の日本酒ファン向けにするとやや物足りなく感じます。ご検討下さい。 さて、いただくのはその黒田庄で栽培された山田錦で造った“純米大吟醸”です。 上立ち香は凜々しくしゃんとした薄甘い香りが鼻腔を撫でます。玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に柔らかな産毛を乗せて、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なステップを踏みながら駆け込んできます。 受け止めて保持すると、自律的にキビキビとした態度で膨らみ、拡散しながら、適度なクリスタル様の澄み切った粒々を連射してきます。粒から滲み出てくるのは甘味７割、旨味３割。甘味は上白糖系の乾いたタイプ、旨味はやや粗めな肌触りのコクが織り上がったタイプで、両者はキビキビとした態度で礼儀正しく踊ります。 流れてくる含み香は抑制の利いたイソアミルの香りで薄化粧を付与。後から酸味は極少、渋味が適量現われて、さらに追随してくる苦味と渋味が協力して甘旨味に緊張感の維持を求め、甘旨味は終盤まで背筋を伸ばして騎士然として踊り続けるのでした。お酒としては文句なく、トップクラスの美酒でした。 お酒の情報（２１年２４１銘柄目）銘柄名「醸し人九平次（かもしびとくへいじ）LaMaison　山田錦　２０２０ＢＹ」酒蔵「萬乗醸造（名古屋市）」分類「純米大吟醸酒」原料米「兵庫県産山田錦」使用酵母「不明」精米歩合「不明」アルコール度数「１５度」日本酒度「不明」酸度「不明」情報公開度（瓶表示）「△」標準小売価格（税込）「７２０ｍｌ＝１６５０円」評価「★★★★★（４．５点＝９８点）」 close

愛知「醸し人九平次LaMaison　山田錦」筋肉質の引き締まった甘旨味が渋苦を従え、騎士然と舞う