自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。「日本泉（にほんいずみ）夏の搾りたて純吟　生酒」。岐阜市の日本泉酒造さんが醸しているお酒です。 日本泉酒造は今春、第二次世界大戦時に酒造りを途絶えさせた岐阜の銘酒「長良泉」の復活に協力しました。長良泉は岐阜市の樽綱本店が醸していた…… more お酒でしたが、４代目の蔵元が太平洋戦争に出征して亡くなり、このため、戦後も酒造りを再開することなく、他蔵のお酒を売る酒販店として営業を続けてきています。 その６代目当主の神谷登貴彦さんが昨年（２０１９）、蔵の納戸を掃除していたところ、長良泉の古いラベルを発見。この話を商売仲間にすると、「是非、復活させよう」という話で盛り上がり、同じ岐阜市内で酒を醸す日本泉酒造に醸造委託の話が舞い込んできたのでした。日本泉酒造は岐阜駅前のマンションの地下で酒造りをする異色の蔵で、ロットの小さい小仕込みを得意とするだけに、「一升瓶２５０本」という注文にもすぐに応じることができたというわけです。是非、来季は神谷さんも酒造りに参加して、長良泉へ魂を吹き込んで欲しいものです。 さて、いただくお酒ですが、酒米非公開６０％精米の純米吟醸、無濾過生酒です。上立ち香は生酒らしい麹バナの香りが微かに。口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にベビーパウダーをはたいて、サラサラな感触を振りまきながら、まっしぐらに駆け込んできます。 受け止めて保持すると、促される前にキビキビとした態度で膨らみ、拡散しながら、適度な大きさの弾力性に富んだ粒々を連射してきます。粒から滲出してくるのは甘味６割、旨味４割。甘味は上白糖系のドライなタイプで一瞬にして広がり、すぐに消え、舞台をスレンダーな旨味に譲ります。 流れてくる含み香は生酒特有のとろりとした甘い香りでデコレート。後から酸味は隠し味役程度に、渋味はそれよりも多く、旨味の踊りにきっちりとしたメリハリを付与するのに尽くすのです。味わいは無駄に広がらずに、旨味と渋味が協力して爽快なサイダーの世界を演じます。飲み下した後の余韻もすっきりしたものでした。夏場でもこういうお酒が造れるのは四季醸造できる蔵の有利な点です。 お酒の情報（２０年２３３銘柄目）銘柄名「日本泉（にほんいずみ）夏の搾りたて純吟　生酒　２０１９ＢＹ」酒蔵「日本泉酒造（岐阜市）」分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」原料米「不明」使用酵母「不明」精米歩合「６０％」アルコール度数「１５～１６度」日本酒度「不明」酸度「不明」情報公開度（瓶表示）「×」標準小売価格（税抜）「１８００ｍｌ＝２４７５円」評価「★★★★★（４．３点）」  close

岐阜「日本泉　夏の搾りたて純吟　生酒」旨味と渋味が主導してサイダー味の世界を描く