栃木県が開発した新しい酒造好適米「夢ささら」を使ったお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べることにしました。 　最後の４本目はこれです。 　「松の壽（まつのことぶき）純米吟醸　夢ささら」。 　塩谷町の松井酒造店さんが醸しているお酒です。 　上々の滑り出しでデビューを果たした…… more 栃木県の夢ささらですが、栽培を担う農家の反応もよく、２年目となる今年は作付け農家が４人増えて１１人となり、作付け面積は前年比２．１倍の２３．６ヘクタールになったそうです。 　今後の天候次第ではあるものの、現時点での収穫量予想は前年の８２６俵（１俵６０ｋｇ）から１８５０俵に跳ね上がる見込みです。 　農家の意欲が高いのは、ひとえに栃木県酒造組合が収穫された夢ささらを全量買い上げることを確約しているためです。 　やはり、多少、リスクをとってでも、酒蔵が積極的に夢ささらを使うことが重要との認識が共有されているためだと思われます。 　令和元年ＢＹには多分、いろいろなスペックの酒が登場することと思います。 　楽しみです。 　さて、４本目のお酒を醸した松井酒造店の蔵元杜氏の松井宣貴さんは、次のように話しています。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　仕込みを２本やりましたが、最初の米は洗米では割れなくて上々でしたが、２本目の時は結構割れてしまい、ばらつきがあるなあというのが感想です。 　麹については見た感じは弾力性があって溶けて味が出そうな雰囲気でしたが、搾った酒は意外にすっきりとして、味の幅が狭い印象でした。 　これが今後、貯蔵をかけて、秋口になったら味わいが開くか閉じるかが重要なので、米としての評価は先になります。 　個人的には熟成に向いているといいなあと期待しています。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　お酒は１本目の朝日榮同様、一回瓶火入れです。 　いただきます。 　上立ち香はマスカット系の果実の甘い香りが凛とした雰囲気で漂ってきます。 　口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら穏やかな態度で忍び入ってきます。 　受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに流れるように大きく広がり、表面にできた気孔から、適度な大きさの清澄な粒粒を次々と噴出させてきます。 　粒から滲み出てくるのは甘味６割、旨味４割。 　甘味は上白糖の流麗なタイプ、旨味はシンプルで素朴な印象で、両者は自主規制をしながら限られた範囲でぐるぐると踊ります。 　流れてくる含み香は明快なマスカット系の甘い香りで、可憐な刺繍を施すのです。 　後から酸味が少々、渋味が相当量現れて、やや強めのメリハリを形成。 　味わいはさらに引き締まって、徐々に縮退しながらエレガントな世界を奏でるのです。 　最後はエッジを鋭くかけて、喉の奥へと吸い込まれていきました。 　余韻は短く爽快でした。 　夢ささらは山田錦と五百万石の中間のようなポジションに感じました。 　２年目に５５％以外のスペックが登場するのが楽しみです。 ＊一升三千円以下の美酒に登録します。 お酒の情報（１９年１５３銘柄目） 銘柄名「松の壽（まつのことぶき）純米吟醸　夢ささら　２０１８ＢＹ」 酒蔵「松井酒造店（栃木県塩谷町）」 分類「純米吟醸酒」 原料米「夢ささら」 使用酵母「協会１４０１号」 精米歩合「５５％」 アルコール度数「１５度」 日本酒度「＋２」 酸度「１．４」 情報公開度（瓶表示）「◎」 標準小売価格（税抜）「１８００ｍｌ＝３０００円」 評価「★★★★★（４．３点）」 close

栃木期待の酒米酒三昧④「松の壽　純米吟醸　夢ささら」新鮮な甘旨味とマスカットの含み香がエレガントな世界を描き、最後はエッジをかけて切れていく