自宅の晩酌にお酒を選びました。 　これです。 　「三代目　二才の醸（にさいのかもし）純米吟醸」。 　茨城県古河市の青木酒造さんが醸しているお酒です。 　二才の醸は石井酒造（埼玉県）の蔵元、石井誠さんが産みの親です。 　２６歳の若さで蔵元になった石井さんは、業界団体の会合な…… more どに出向くと父親よりも年上の蔵元が多く、肩身の狭い思いをしたのです。 　面と向かって言う人はいなかったようですが、顔に「この若造が。青二才に何ができる」と書いてあったとか。 　「確かに未熟かもしれないが、若い情熱で美味しい酒を造ってみせる」と決心し、同世代の杜氏とともに酒造りに挑み、出来上がったお酒に、“青二才が造った酒”という意味を込めて、「二才の醸」としたそうです。 　これが話題性があっただけでなく、味も良いという評判で売れたことから、翌年も造ります。 　２造り目が終わった段階で、石井さんは、 　「もうすぐ３０歳になるので、青二才とも言えなくなる。年下で後を継いでくれる蔵に銘柄を譲ることにしよう」 　と決め、伝手をたどって、たどり着いた宝山酒造（新潟県）の渡辺桂太蔵元後継者につないだのでした。 　宝山酒造も２造りをしたところで渡辺さんが３０歳になることから、３代目を探し、手を上げたのが青木酒造の蔵元後継者、青木知佐さんでした。 　二才の醸は２０代が造る酒というのが条件でした。 　一方で青木酒造は青木知佐さんと弟さん以外は３０歳以上だったので、地元の若者や筑波大学の学生などに参加を呼びかけて、酒造りをしました。 　昨年秋に作業中の彼らを見物に参りました。 　その日は、仲仕込みで結構な量の蒸したお米を全員で床に広げて冷まし、その後、仕込みタンクに投入する作業に汗を流していました。 　醪は順調に発酵し、三代目の１造り目のお酒は４月にリリースされたというわけです。 　地元産ふくまるの５５％精米、純米吟醸、火入れです。 　いただきます。 　上立ち香は酒エキスの香りが少々。 　口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に砂交じりのとろみ層を適度に乗せて、テンポよく駆け込んできます。 　受け止めて保持すると、自律的にキビキビとした態度で膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を連射してきます。 　粒から滲出してくるのは甘味７割、旨味３割。 　甘味は中庸でバランスの取れたタイプ、旨味はシンプルで甘味と一緒にごくスタンダードな舞いを披露します。 　そこに流れてくる含み香は適度に果実感の明確なフルーツの香りが薄化粧を付与。 　後から酸味は適量、渋味はそれよりも多く現れて、甘旨味を上空から包み込むのです。 　接触した部分から甘味と渋味が溶け合い、味わいは徐々にクリアな干しぶどうの世界へと転じて行くのでした。 　最後は渋味が前面に出ながら、全体を縮退させて、一気に切れ上がっていきました。 　出来上がりは上々です。 　来季も青木知佐さん主導で造るそうですが、非常に楽しみです。 ＊一升三千円以下の美酒に登録します。 お酒の情報（１９年１４９銘柄目） 銘柄名「三代目　二才の醸（にさいのかもし）純米吟醸　２０１８ＢＹ」 酒蔵「青木酒造（茨城県古河市）」 分類「純米吟醸酒」 原料米「ふくまる」 使用酵母「茨城ＳＹＳ酵母」 精米歩合「５５％」 アルコール度数「１６度」 日本酒度「不明」 酸度「不明」 情報公開度（瓶表示）「△ 標準小売価格（税抜）「１８００ｍｌ＝２９００円」 評価「★★★★★（４．２点）」 close

茨城「三代目　二才の醸　純米吟醸」スタンダードな甘旨味が酸味と渋味に包まれて徐々に干しぶどうの世界に転ずる