忍者の里、甲賀で美酒を醸す美冨久酒造さんのお酒をまとめて取り寄せて、じっくりと味わいを堪能することにしました。 　最後の５本目はこれです。 　「三連星（さんれんせい）純米吟醸　無濾過生原酒　番外編供．ナダ産シャンパン用酵母使用」。 　三連星の定番３品が軌道に乗ってきて余…… more 裕ができたことから、蔵元の藤居範行さんはいわゆる季節商品的な限定品を手がけるようになっています。 　そして、３０ＢＹもまったく新しいことにチャレンジしています。 　まずは裏貼りの説明書きを紹介します。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　三連星の番外編３０ＢＹ。今年のテーマはワイン専用酵母を使った三部作。 　すべて滋賀県産山田錦６０％精米を使用しています。 　いったい、ワイン酵母たちは日本酒に何を仕掛けるのか？。 　こいつを三連星の記憶回路に取り付けろ！ ＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　１シーズンに１本、ワイン酵母を使ってお酒を造る酒蔵は増えていますが、美冨久酒造としては後発のハンディを、３種類の酵母で次々と商品化することで乗り越えようとしたのです。 　第一弾は日本醸造協会が保有しているワイン酵母、第二弾はカナダ産スパークリングワインの酵母、第三弾はフランスのワイン酵母を使うことにしたのです。 　ワイン酵母を使う酒蔵の大半は清酒酵母との混濁を恐れて、清酒の造りの終盤に取り組むのですが、美冨久酒造の場合、季節商品として断続的に出荷する方針を立て、１２月、２月、４月の発売に合わせて造るように現場に指示が下りたのです。 　さぞや現場は大変だったと思います。 　これについて、開発本部長の村田正さんは次のように話しています。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　第一弾では、ワイン酵母はアルコールが出ないという話だったので、１２度ぐらいで発酵が止まるかなと見ていたのですが、１６度まで行って、かつ酸も出たので、美冨久の酒の同類の味わいになりました。 　第二弾はあんまり見たことがない泡が立ち、ある日突然、切れなくなりました。 　アルコールは１５度まで行ったものの、日本酒度はマイナス８、酸度は２．０でバナナのようでした。 　第三弾のフランス産ワイン酵母では、藤居社長から「目指せシャブリ」と言われています。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 　実は空太郎は第三弾の醪の発酵が盛んなタイミングで酒蔵にお邪魔をし、醪の香りを嗅がせてもらったのですが、これがまさにバナナシェイクそのものといった香りでした。 　酒蔵の醪からこんな強烈な香りを嗅いだのは初めてでした。 　さて、いただくのは第二弾のお酒です、 　いただきます。 　上立ち香は甘酸っぱい典型的な香りが漂ってきます。 　玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を乗せて、まっしぐらに滑り込んできます。 　受け止めて舌の上で転がすと、促されるままにリズミカルに膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒粒を連射してきます。 　粒から滲出してくるのは甘味７割、旨味３割。 　甘味は上白糖系のさらりとした印象、旨味はシンプルで痩身のタイプで、両者はマイルドな踊りを静かに始めます。 　流れてくる含み香はフレッシュな果実の香りでデコレート。 　後から来る酸味は丸みを帯びたタイプで、甘旨味に接近してこすれ合うのです。 　接触部分からどんどん溶け合って甘酸っぱい味わいへと着実に変質し、最後は全体が甘酸の世界となり、全体は終盤になると渦を巻きながら、喉の奥へと吸い込まれていきました。 　余韻はジューシーそのものでした。 　三連星は番外編であっても完成度は高かったのでした。 ＊一升三千円以下の美酒に登録します。 お酒の情報（１９年１４６銘柄目） 銘柄名「三連星（さんれんせい）純米吟醸　無濾過生原酒　番外編供。横娃隠牽贈戞 酒蔵「美冨久酒造（滋賀県甲賀市）」 分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」 原料米「滋賀県産山田錦」 使用酵母「カナダ産シャンパン用酵母」 精米歩合「６０％」 アルコール度数「１５度」 日本酒度「－８．７」 酸度「２．１」 情報公開度（瓶表示）「◎」 標準小売価格（税抜）「１８００ｍｌ＝３０００円」 評価「★★★★★（４．４点）」 close

甲賀の美酒⑤滋賀「三連星　純米吟醸　無濾過生原酒　番外編Ⅱ」上質な甘旨味と品のいい酸味がこすれ合いながら、甘酸の世界を初々しく奏でる