自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。「信州亀齢（しんしゅうきれい）醸熱タンク　純米吟醸　無濾過生原酒」。長野県上田市の岡崎酒造さんが醸しているお酒です。 このお酒は普段の「信州亀齢」とは違った表ラベルのデザインになっています。蔵元杜氏である岡崎美都里さんのお姉さんで…… more 漫画家のおかざき真里さんが描いたものです。おかざき真里さんは岡崎酒造の蔵元長女に産まれましたが、多摩美術大学を卒業後は博報堂に入社。ＣＭプランナーやデザイナーの仕事をする傍ら、漫画家としての活動を続けて１９９４年にデビュー。その後、２０００年に博報堂を退社してフリーの漫画家として活動しているのです。 今回の絵を描くにあたって、裏ラベルで次のように語っています。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊三姉妹の上二人は家を飛び出し、末っ子が女性杜氏となり、旦那様とともに造りを守ってくれています。不出来の姉は、絵を描くことしかできません。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊蔵を継ぐという仕事を妹に押しつけた、との申し訳ない気持ちが滲み出ています。確かに１０年前までは鳴かず飛ばずの将来に不安だらけだった酒蔵でしたから、そういう気持ちにもなるのでしょう。幸いに岡崎夫妻の頑張りで、蔵はいまや上昇気流に乗っています。 さて、今夜、いただくお酒は、長野の有力酒販店３軒がタンク１本分を買い取って販売する「醸熱タンク」シリーズの２０２１ＢＹのお酒になります。山恵錦５０％精米の純米吟醸、無濾過生原酒です。上立ち香は明朗で麗しいフルーティーな香りが鼻腔をくすぐります。玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に微細な気泡を包含したとろみ層を乗せて、流麗な雰囲気で忍び入ってきます。 受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。粒から滲出してくるのは甘味９割、旨味１割。甘味は中濃ではあるものの流動性に富み、旨味はシンプルでシルキータッチの印象で、両者は甘味主導でエレガントな世界を描くのです。 流れてくる含み香も典型的なカプロン酸エチルの甘い香りで派手めにデコレート。後から酸味と渋味が少量現れて、味わいに明快なメリハリを付けるのです。甘旨味は無駄に大きく広がることなく、粛々とゴージャスで妖艶な世界を描き切るのでした。ますます磨きがかかった印象でした。 お酒の情報（２２年２５０銘柄目）銘柄名「信州亀齢（しんしゅうきれい）醸熱タンク　純米吟醸　無濾過生原酒　２０２１ＢＹ」酒蔵「岡崎酒造（長野県上田市）」分類「純米吟醸酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」原料米「山恵錦」使用酵母「不明」精米歩合「５０％」アルコール度数「１５度」日本酒度「不明」酸度「不明」情報公開度（瓶表示）「△」標準小売価格（税込）「７２０ｍｌ＝３３００円」評価「★★★★★（９８点）」 close

長野「信州亀齢　醸熱タンク　純米吟醸無濾過生原酒」とろとろでゴージャスな甘旨味が妖艶に色香を放つ