「獺祭」を醸す山口県岩国市の旭酒造が、遠心分離機を使って搾ったお酒をリニューアルし、装いも新たに売り出しました。その発表会が都内で開かれたので、空太郎も行って参りました。お披露目会には桜井一宏社長と三浦史也蔵長（当時）が参加されていました。リニューアルの狙いについて、桜井社長が話…… more した後、三浦史也蔵長が、醸造面でどのような工夫をしたのかを話してくれました。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊通常の磨き二割三分のお酒は、醪の最高温度を１１．８度に設定して、溶かしすぎないように配慮して造っています。それをそのままヤブタで搾れば狙った酒質になるわけですが、これを遠心分離機にかけるとやや味わいが薄くなってしまうわけです。そこで、遠心分離で搾っても味わいがもう少し出るような醪を造ることに挑戦しました。温度を高くして、もう少しだけ醪を溶かそうと、試行錯誤を重ねました。 その結果、最高温度を１２．３度まで引き上げて、醪の経過を管理すると理想のお酒になる、との結論に達しました。これなら遠心分離１００％のお酒として発売できると確信して、今回のリニューアルを済ませました。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊そして、今回、磨き二割三分のヤブタ搾りのお酒が４合瓶税込みで６２７０円に対して、遠心分離は１６５００円に設定したのです。この価格は磨き二割三分を超える商品として売り出した「磨きその先へ」の３３０００円の次に位置づけられるハイスペック商品です。近年、４合瓶で１００００円を超えるお酒が続々と誕生し、その多くが順調に売れていることから、旭酒造も１００００円以上のラインナップを充実させようとの思惑があると思われます。 さて、それでは、いよいよ、遠心分離をいただくことにします。上立ち香はゴージャスなカプロン酸エチルの甘い香りが鼻腔を撫で回します。玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、鏡面のように磨いた表面に油膜を張って、キラキラと輝かせながら、優雅に滑り込んできます。 受け止めて保持すると、促されるままに流れるように膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのクリスタル様の透明感溢れる粒々を連射してきます。粒から滲出してくるのは甘味８割、旨味２割。甘味は９９．９９９％純度のさらにクリアで高貴なタイプ、旨味はシンプル無垢でコクはほんの微かな印象で、両者は仲良く絶妙なハーモニーを奏でるのです。 流れてくる含み香は高貴でフローラルな香りで完璧に飾り付け。後から酸味と渋味がほんとに微量現れて、隠し味役を担います。甘旨味は隙の無い完璧な舞いを終盤まで続け、最後は反転縮退して昇華して行きました。ヤブタ搾りとの違いは、透明感が増し、コクが細くなった印象でした。どちらも最高峰のお酒ですが、比較すれば遠心分離がわずかに上を行く気がしました。旭酒造の挑戦に拍手です。 お酒の情報（２２年２１８銘柄目）銘柄名「獺祭（だっさい）純米大吟醸　遠心分離　磨き二割三分　２０２１ＢＹ」酒蔵「旭酒造（山口県岩国市）」分類「純米大吟醸酒」原料米「山田錦」使用酵母「不明」精米歩合「２３％」アルコール度数「１６度」日本酒度「不明」酸度「不明」情報公開度（瓶表示）「△」標準小売価格（税込）「７２０ｍｌ＝１６５００円」評価「★★★★★（９９点！）」  close

山口「獺祭　純米大吟醸　遠心分離　磨き二割三分」さらに透明感が増した甘旨味がスリムに舞う