皆さんのほうが詳しいでしょうが、風の森の油長酒造さんの新しいライン。コンセプトとしては『奈良に伝わる古典醸造法を参考にする』ということですが、まあ似たようなアプローチは新政がむかし頒布会で古典技法大全みたいな企画をやってましたね。僕がわざわざ買ったのは、もう一つのブランドの約束事…… more として『室町時代の大甕を再現した甕を使って仕込む』という物があるからです。過去、松の司、仁井田本家のアンフォラなど甕仕込みの日本酒に注目していて、僕より飲んでいる経験がある人も多くはないだろうということで、わざわざやってみるかという気になりました。第一弾として1355がすでにリリースされていて、そちらは御酒之日記に記された菩提山正暦寺の技法を参考にした0段仕込みというものでした。いわゆる菩提元というやつで、それはいくつか商品化されているものもあり、似たような物を飲んだことがある人もいらっしゃるでしょう。今回は多聞院日記に記された興福寺多聞院の技法を参考にした3段仕込みということで、より現代の清酒に近い感じになっているっぽいので、まあ前回の物よりは僕も楽しめそうという事も購入に至った要因としてあります。酸とか杏仁系の香りで、色がついていて濃醇そうなルックス。でも含むと事前の印象よりはスイっと爽やかで飲みやすい。程よい甘み、爽やかさクリアーさ飲みやすさ。杏仁はある、少しヨーグルト的なニュアンスもあるけど、酸味とかエキスがそこまできつ過ぎない。あるはあるけど、一線を引いている。少し洋酒系、若干ウッディやタニック、そしてその周辺に現れるカラフルさ。ウッディから少しスッとミンティなニュアンス。トーンの高さというか、ヌケの澄んだ雨上がりの空みたいな気持ちよさ。若干の穀物感はエキスっぽ過ぎるというよりドライ感、野趣やスパイシーさは感じさせるが、モダンな複雑みくらいの感覚で済ませてくる。少し枯れたようなドライさ、滋味。程よいビター感や濡れた石。そういったニュアンスの主張が強すぎずにバランスよく混ざり合って出ているので、けっこうモダンな気分で飲めるんじゃないかな。好ましい複雑さというのか。甘さ、酸味、エキス感……ただやってみただけではなくてきちんと売れるように調整してあるので、ちゃんと美味しいです。余韻で抜けるこの爽やかさのあるバニラリー感みたいなものはちょっとクセになりますね。まさに雨過天晴、味わいを考えたら色々あるけど提供するなら絶対に僕は青磁で出したい。これは、、、美味い！！もともとこういう変わり種は決して嫌いではないんですが、クオリティ高い。各要素、ポイントポイントは色んなお酒を飲んでいる人なら、思い浮かぶ銘柄がいくつもあると思います。ただ本当に上手に調節してあって、変わり種的なエッセンスもあるんだけど飲みやすい。やっぱ爽やかさが凄く良いなあ。グレープフルーツみたいな酸があるけど、きつくなくてスッと飲みやすい。ちょっと加水でもしてんのか？ってくらい。タッチの円さもある、しっとりもしてて沈み込むような繊細な表現もあり、そのあたりはちゃんと日本酒っぽい形も保ってる。爽やかな酸味、瑞々しい甘み、きつすぎないタニックさ、メローさみたいな。バナナとか青リンゴもと溶かし、しっとりメローに乳酸的な香りを活かして、ちょっとお香とか和菓子とか幽玄とか寺社そんなイメージも担保してて。穀物的なニュアンスも心地よく、野趣のあるドライ感や和のスパイシーさ馨しく、少し石っぽいような印象でキレまで行かないけどフィニッシュの形もつくってある。チーズっぽさとか塩味も若干感じるところ、その辺が強烈すぎずいい具合に薄めてあるような味わい（薄めてないとしても）で、モダンなエッセンスも感じさせて。おぼろげながら感じる甕のニュアンスはどうだろう。なんかちょっと蜜っぽく艶っぽく、でもちょっと野趣なんかも出るその辺の微妙なところ？出てるような感じはします。そら俺は酒造関係者じゃないからわからないけど経験として。この妙なスイっと感はどういう理屈で出ているんだろう。硬水の硬さがッそのまま出ているという感じは皆無で、香水由来の健全な発酵の過程に出ているみたいな。これコテコテじゃなくて爽やかさがあるので、500ミリくらいだと飲み切れちゃうよ？変わり種ではあるけれど、お料理を食べながらこれだけを飲み進めていっても別に問題ないくらいに落とし込んである。日本酒フリークならグラス1杯くらいは飲んでみてほしいけど、500ミリ7700円ってたけーわ。 close

水端1568（風の森）