岐阜県中津川市から北海道東川町に酒蔵を移転した三千櫻酒造のお酒をまとめて取り寄せて飲み比べることにしました。２本目はこれです。「三千櫻（みちざくら）純米大吟醸　きたしずく」。 さて、大英断で北海道へ移転してきた蔵元の山田耕司さんは、表向きはそんな素振りは見せませんが、「…… more 三千櫻の銘柄をまったく知らない道産子の人たちが、三千櫻のお酒を買ってくれるのか」という不安はあったと思います。 ところが蓋を開けてみると、道内の酒販店からの引き合いが殺到して、立ち上がりは注文に応じきれない事態になりました。これについて、山田さんは次のように話しています。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊北海道にも有力な地酒販売店は結構な数があって、長年、本州から人気の地酒を仕入れて販売していたようです。そんな彼らは、本州の人気銘柄に負けないレベルの酒蔵が北海道にもあってほしいと切望していたようなのです。だから、僕らの移転を待ってましたと反応してくれました。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊先行して２０１６年に登場した上川町の上川大雪酒造も同様の理由で、あっという間に北海道を代表する人気地酒になっています。三千櫻酒造の北海道進出一年目は岐阜時代よりも少し多めの２５０石弱でスタートしましたが、設備能力的には８００石まで造れます。おそらく数年でフル生産になることは間違いないでしょう。 さて、２本目は、１本目と同じ地元産きたしずくですが、さらに磨いた４５％精米の純米大吟醸酒、一回火入れです。上立ち香は上品で芳しい甘い香りがひらひらと。玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に薄らととろみ層を乗せて、健やかなムードを放ちながら忍び入ってきます。 受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。粒から滲み出てくるのは甘味８割、旨味２割。甘味は９９．９％純度のクオリティの高いタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、甘味主導で甘露な世界を描いていきます。 流れてくる適度に派手な甘い香りでデコレート。後から酸味と渋味が極少現われて隠し味役を受け持ち、甘旨味の繊細で風流な舞いが終盤まで続き、飲み下した後の余韻は芳しい物でした。それでは、三千櫻酒造の新天地のお酒、３本目に参ります。 お酒の情報（２１年１９１銘柄目）銘柄名「三千櫻（みちざくら）純米大吟醸　きたしずく　２０２０ＢＹ」酒蔵「三千櫻酒造（北海道東川町）」分類「純米大吟醸酒」「一回火入れ酒」原料米「きたしずく」使用酵母「不明」精米歩合「４５％」アルコール度数「１５度」日本酒度「不明」酸度「不明」情報公開度（瓶表示）「△」標準小売価格（税込）「１８００ｍｌ＝３４１０円」評価「★★★★（４．４点＝９４点）」 close

北海道「三千櫻　純米大吟醸　きたしずく」クオリティの高い甘味が主導して、繊細で風流な世界を描く